影裏

沼田真佑先生の『影裏』を読了しました。第157回芥川賞受賞作です。『影裏』…“えいり”と読みます。沼田真佑先生です。医薬品を扱う東北の企業に勤める「わたし」は、同じ職場の日浅という男と親しくなる。日浅の転職を機にふたりは疎遠になってしまうが、東…

隠喩としての病

アメリカの作家スーザン・ソンタグの『隠喩としての病(Illness as Metaphor)』は大学の教養部時代に原書を読みました。特に難解な著作ではなく結構面白かったです。続編のエイズ編はお恥ずかしながら未だ読んでいませんスーザン・ソンタグ自身に関してはあ…

炎上上等

高須克弥先生の『炎上上等』を読了しました。「誰も言わないなら僕が言う! 」 僕は別に炎上させたいわけじゃない。 正しいことは「正しい」、間違っていることは「間違っている」 と言っているだけだ……。暴論か? 正論か! ? 数々の言動や破天荒な行動で物議を…

イノセント・デイズ

早見和真先生の『イノセント・デイズ』を読了しました。早見先生です。田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか?産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の…

死んでいない者

滝口悠生先生の『死んでいない者』を読了しました。第154回芥川賞受賞作品です。滝口先生です。秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。一人ひとりが死に思いをはせ、互いを思い、家族の記憶が広がっていく…

愚行録

貫井徳郎先生の『愚行録』を読了しました。ええ、はい。あの事件のことでしょ?幸せを絵に描いたような家族に突如として訪れた悲劇。深夜、家に忍び込んだ何者かによって一家四人が惨殺された。隣人、友人らが語る数多のエピソードを通して浮かび上がる『事件…

完璧な母親

まさきとしか先生の『完璧な母親』を読了しました。まさきとしか先生です。彼女の作品を読むのは初めてです。流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年…

月の上の観覧車

荻原浩先生の『月の上の観覧車』を読了しました。荻原浩先生は『海の見える理髪店』で第155回直木賞を受賞されています。この『月の上の観覧車』は8篇の短篇小説が収められた一冊です。▪️トンネル鏡…東京で家庭を構えた男が、紆余曲折を経てひとりで故郷に帰…

緋い猫

浦賀和宏先生の『緋い猫』を読了しました。初読みの作家さんです。浦賀和宏先生です。1978年神奈川県生まれ…以外の経歴は不詳です。十七歳の洋子は佐久間という工員の青年と恋に落ちる。だが仲間二名が殺害される事件が起き、犯人と疑われた彼は姿を消す。洋…

絶対正義

秋吉理香子先生の『絶対正義』を読了しました。秋吉理香子先生です。チャーミングなお方〜☺️4人の女たちに届いた『思い出の会』への招待状。差出人は、5年前に殺したはずのあの女……。正義のモンスター。あんな女、本当は大嫌いだった。範子はいつでも礼儀正…

彼女はもういない

西澤保彦先生の『彼女はもういない』を読了しました。西澤保彦先生です。母校の高校事務局から届いた一冊の同窓会名簿。資産家の両親を亡くし、莫大な遺産を受け継いだ鳴沢文彦は、すぐさま同学年の比奈岡奏絵の項を開いた。10年前、札幌在住だった彼女の連…

代償

伊岡瞬先生の『代償』を読了しました。伊岡瞬先生の作品は初めてです。平凡な家庭の小学生・圭輔は、ある事故をきっかけに遠縁の同級生・達也と暮らすことになり、一転、不幸な境遇に陥る。寿人という友人を得て苦境を脱し、長じて弁護士となった圭輔に、収…

人質の朗読会

小川洋子先生の『人質の朗読会』を読了しました。小川洋子先生です。南米のある村で、日本人7人と添乗員が乗ったマイクロバスが、遺跡観光を終えて首都に向かう帰路、反政府ゲリラに襲撃され、身代金と仲間の釈放を求める犯行声明が発表された。拉致現場は標…

嘘を愛する女

岡部えつ先生の『嘘を愛する女』を読了しました。岡部えつ先生です。大手食品メーカーに勤める由加利は、研究医で優しい恋人・桔平と同棲5年目を迎えていた。ある日桔平が倒れて意識不明になると、彼の職業はおろか名前すら、すべてが偽りのものだったことが…

世界の果て

中村文則先生の『世界の果て』を読了いたしました。短篇集です。ほの暗さの快楽 若き「実存主義作家」の最新短篇小説集と評された一冊です。奇妙な状況におかれた、どこかまともでない人たち。彼らは自分自身の歪みと、どのように付き合っていくのか……。全体…

遮光

またまた中村文則先生の著作を読了いたしました。いや〜最近めちゃくちハマっています✌️先日その話を同僚のドクターにしたら彼はすぐにネットで検索してこう言いました。イケメンじゃないですか?◯◯(私の元同居人)に顔が…特に眼のギョロっとした感じが似て…

しんせかい

山下澄人先生の『しんせかい』を読了しました。第156回芥川賞受賞作です。山下澄人先生です。劇団主宰者で、倉本聰先生の富良野塾第2期生です。10代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験…。19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗…

素敵な日本人

東野圭吾先生の短編集『素敵な日本人』を読了しました。9つの短編から構成されています。■正月の決意初詣に向かったら、神社に奇妙な格好で倒れている町長がいた。何故こんな場所で?こんな格好で?これは殺人未遂事件なのか?■十年目のバレンタインデー作家…

悪いものが、来ませんように

芦沢央先生の『悪いものが、来ませんように』を読了しました。芦沢央先生です。初読みの作家さんです。助産院に勤める紗英は、不妊と夫の浮気に悩んでいた。彼女の唯一の拠り所は、子供の頃から最も近しい存在の奈津子だった。そして育児中の奈津子も、母や…

蜘蛛の声

中村文則先生の短編小説です。昨日紹介した『土の中の子供』に収録されています。タイトルだけ見ると、芥川の『蜘蛛の糸』を想起させられますが全然違います。本作は蜘蛛の『声』=『幻聴』が聞こえる男のお話です。橋の下の暗闇、世界から隠れる、意識が裂…

土の中の子供

中村文則先生の『土の中の子供』を読了しました。27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。理不尽に引きこまれる被虐体験に、生との健全な距離を見失った「私」は、自身の半生を呪い持てあまし…

何もかも憂鬱な夜に

読了しました。中村文則先生の著作…何冊目かなぁ。とにかくスゴイ勢いで読みまくっています。施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何か…

また、同じ夢を見ていた

住野よる先生の第2作です。『君の膵臓をたべたい』で衝撃的なデビューを果たした、今注目の作家です。(私…キミスイはまだ読んでいません)※『君の膵臓をたべたい』=『キミスイ』と呼ぶらしいです。小学生の小柳奈ノ花。自分は賢く同級生はすべて馬鹿だと思…

命売ります

三島由紀夫先生の『命売ります』を読了いたしました。1968年に『週刊プレイボーイ』で連載されていた長編小説で隠れた怪作小説として、最近ブームになっている作品です。昨年2015年は三島先生の生誕90年に当たり、当初の重版は2000部だったそうですが、その…

サイコパス

中野信子先生の『サイコパス』を読了しました。中野信子先生です。脳科学者ということですが医師免許は持っていらっしゃらないようです。残念ながら私…面識はございません。平気でウソをつき、罪悪感ゼロ ……そんな「あの人」の脳には秘密があった! 外見はク…

強父論

面白くて一気に読了しました。阿川佐和子さんの文章は軽快で読みやすいから好きです♪お父様である阿川弘之先生のことを書かれたエッセイです。阿川弘之先生が94歳で大往生されてから、今年8月で一年。娘佐和子が、強父語録とともに、父との62年間を振り返り…

盲目的な恋と友情

辻村深月先生の『盲目的な恋と友情』を読了しました。一人の美しい大学生の女・蘭花と、その恋人の指揮者の男・茂実。そして彼女の親友の女・留利絵。恋にからめとられる愚かさと、恋から拒絶される屈辱感を、息苦しいまでに突きつける。これが、私の、復讐…

時限病棟

知念実希人先生の『時限病棟』を読了しました。『仮面病棟』の続編です。(私…『仮面病棟』は読んでいません)知念実希人先生です。内科の現役ドクターでもあります。目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。 なぜこんな場所にいるのか?監禁さ…

鏡の花

道尾秀介先生の『鏡の花』を読了しました。↓道尾秀介先生です。少年が抱える切ない空想、曼珠沙華が語る夫の過去。老夫婦に届いた絵葉書の謎、少女が見る奇妙なサソリの夢。姉弟の哀しみを知る月の兎、製鏡所の娘が願う亡き人との再会。ほんの小さな行為で、…

珠玉の短編

山田詠美先生の『珠玉の短編』を読了しました。久々に興味深い作品集に出会いました。山田詠美先生と言えば、『ベッドタイムアイズ』で話題になった人…という認識ぐらいしかなくて当時まだ子供だった私には性的な匂いが強すぎて生活圏外の作家でした。中学生…