何もかも憂鬱な夜に
読了しました。
中村文則先生の著作…何冊目かなぁ。
とにかくスゴイ勢いで読みまくっています。
施設で育った刑務官の「僕」は、夫婦を刺殺した二十歳の未決囚・山井を担当している。
一週間後に迫る控訴期限が切れれば死刑が確定するが、山井はまだ語らない何かを隠している。どこか自分に似た山井と接する中で、「僕」が抱える、自殺した友人の記憶、大切な恩師とのやりとり、自分の中の混沌が描き出される。
重大犯罪と死刑制度、生と死、そして希望と真摯に向き合った長篇小説です。
主人公は本作でも一人称です。
そして…これまで私が読んだ先生の著作の中で、主人公がそれほど悲惨でない作品です。
(主人公の周辺はかなり悲惨です💦)
テーマは重いのですが、比較的さらっと読めました。
生と死に関して、自分が言いたかったことを代弁してくれている言葉が適所に散りばめられていたから?…だと思います。
そういう意味でフラストレーションが少ない作品でした。
人間と、その人間の命は、別のように思うから。
…殺したお前に全部責任はあるけど、そのお前の命には、責任はないと思ってるから。お前の命というのは、本当はお前とは別のものだから。…
これなんです!
これこそまさに…
自殺願望の強いクランケを前に私がいつも診察室で伝えていることなんです!
この作品は是非読んでいただきたいと思います。
文庫本の巻末には、あのピース又吉さんが解説を書いています。
それから…
作中にJ.S.バッハの『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』について言及されているシーンがあります。
未決囚の山井がこの曲を聴いてこんな風に言います。
いろいろな人間の人生の後ろで、この曲はいつも流れているような、そんな感じがする…
私の好きな曲です。
私もそんな感じがします☺️