しんせかい
山下澄人先生の『しんせかい』を読了しました。
第156回芥川賞受賞作です。
10代の終わり、遠く見知らぬ土地での、痛切でかけがえのない経験…。
19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。
辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。
苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い……。
とてもシンプルな青春小説です。
ノンフィクションに近いのかな?
かなり読みやすい作品でした。
読みやすいというのは、小難しい解釈などなく、淡々と書かれていて…という意味です。
淡々とし過ぎて感情移入はしにくく
さほど感動もなかったです。
『演劇塾』という特殊な世界がテーマというのもあったと思いますが。
ただ…これだけシンプルであるにもかかわらず読んでいてありありと情景が浮かんでくるのは
著者の力量なのか?
それとも
『北の国から』のドラマの記憶なのか?
作中に『離人症』を思わせる記述があり
これは結局何だったのか不明です。
精神科医としては興味深い所見でした。
※離人症…自分が自己の身体から一体性を失って体験されるような症状があり、たとえば現実感の喪失であったり、自分が自身の身体から離れて自分を見ているような体験をすることもある。
10代後半から20代にかけて好発。
お時間があればご一読していただきたい作品だと思いました。