ジャッジメント

小林由香先生の『ジャッジメント』を読了しました。


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 大切な人を殺された者は言う。
「犯罪者に復讐してやりたい」と。
 凶悪な事件が起きると人々は言う。
「被害者と同じ目にあわせてやりたい」と──。

二〇××年──。凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、治安の維持と公平性を重視した新しい法律が生まれた。それが『復讐法』だ。

復讐法は、犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できるものだった。

裁判により、この法の適用が認められた場合、被害者、またはそれに準ずる者は、旧来の法に基づく判決か、あるいは復讐法に則り刑を執行するかを選択できる。
ただし、復讐法を選んだ場合、選択した者が自らの手で刑を執行しなければならない。そのため、旧来の法による刑を選ぶ者も多くいた。
しかし、施行から一年が経ち、復讐法の申請率は高くなってきている。遺族の報復心を満たす結果に繋がっているからであろう。一方で、人権侵害や冤罪の観点から、本法を悪法と呼び、廃止運動を行う人々も増えた。

大切な人が殺された時、あなたは『復讐法』を選びますか?


『復讐法』をテーマにした作品です。

物語は5つの章で構成されています。


▪️第1章〜サイレン

16歳の天野朝陽は、堀池剣也を主犯格とする19歳の4人の少年に拉致監禁され、激しい暴行を受けた後、4日目の早朝に殺害された。
【受刑者】堀池剣也(19歳)
【執行者】天野義明(被害者の父)


▪️第2章〜ボーダー

吉岡エレナは深夜2時、同じ家に暮らす祖母の吉岡民子の頸部を刃渡り20cmの牛刀で切りつけて致命傷を負わせ、その後も執拗に胸部を刺して殺害した。
【受刑者】吉岡エレナ(14歳)
【執行者】吉岡京子(被害者の娘で受刑者の母でもある)


▪️第3章〜アンカー

櫛木矢磨斗は大通りで奇声をあげながらサバイバルナイフを振り回し、次々と通行人を襲った。この事件で3人が死亡、5人が重軽傷を負った。
【受刑者】櫛木矢磨斗(27歳)
【執行者①】久保田航平(死亡した医大生の兄)
【執行者②】川崎景子(死亡した専業主婦の一人娘)
【執行者③】遠藤武(死亡した女性教師の婚約者)


▪️第4章〜フェイク

10歳の前田アキラは、かつて病院だった建物の屋上から突き落とされて死亡した。殺害したのは有名な霊能力者・神宮寺薪絵だった。
【受刑者】神宮寺薪絵(67歳)
【執行者】前田佐和子(被害者の母)


▪️第5章〜ジャッジメント

森下麻希子と内縁の夫の本田は、麻希子の娘である5歳のミクを虐待の末、餓死させた。
【受刑者①】森下麻希子(31歳)
【受刑者②】本田隆男(32歳)
【執行者】森下隼人(被害者の兄であり麻希子の10歳の息子)


全ての章において、『応報官』と呼ばれる刑の執行見届けの役人・鳥谷文乃が登場します。

極めて重く、現実的にはあり得ないテーマですが、全編を通して淡々と書かれています。

自分が遺族だったら…
もし『復讐法』が本当に実現したら…

多分私は執行者にはならないと思います。

でも神様に祈るだろうなぁ。

人を傷つけた人には必ず天罰が下ります。
神様がきっと裁いてくれると
私は信じています。


興味深い作品でしたが、読んでいるうちに、心が迷路に迷い込んでしまったような錯覚に陥ってしまいました。