ホテルローヤル
第149回直木賞受賞作品です。
↓桜木紫乃先生です。
湿原を背に建つ北国のラブホテル。
訪れる客、経営者の家族、従業員はそれぞれに問題を抱えていた。
恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員。
「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻。
舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦。
親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師。
働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性。
ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。
物語は、釧路湿原を見下ろす高台に建つ『ホテルローヤル』というラブホテルが、閉館して廃墟と化した後から、40年前のホテル開業前まで順に遡る連作の形で、そこに行き交う人々の少し切ない日常を切り取った短編7編が収録されています。
この作品が上梓されたのと同時期に、ホテルは廃業、建物が解体されたとのこと。
物語の一つ一つはどうってことのないお話です。
どの短編もあまり心に残らないというか…
特筆すべき文章テクニックもなければ
独特の心理描写やエピソード性もなく
ただ淡々とお話が続く一冊でした。
強いて言えば、6番目の『星を見ていた』は少し心を揺さぶられました。
非日常的なラブホテルに纏わる普通の人たちの日常…
そう…とても日常的な作品でした。
そういう意味ではあまり面白味がある作品とは言えませんでしたが
この作品…実は日常を思い出すためのヒントが隠された作品なのでは?
などと読後に思いました。
あっという間に読めてしまう小説です。
ウォーミングアップにお薦めします。