迷宮
中村文則先生の『迷宮』を読了しました。
胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く――。
都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。
事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。
時を経て成長した遺児が深層を口にする時、深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。
善悪が混濁する衝撃の長編小説です。
中村先生の作品には陰鬱なものが多くて、本作も例外ではなかったのですが、他の作品と違って、ちょっとだけ光が見えるような終わり方だったと思います。
それは決してハッピーエンドとは言えないものなのかもしれませんが
登場人物が何となく落ち着いたような
こんな終わり方もあるんだな…
と思いました。
いや〜
面白かったです。
ストーリーがどんどん展開するようなミステリーではなく
読み進めていく途中で、罠のような泥濘がいくつも見えてきて嫌になりそうでしたが
何とか読了できました。
小さな傷みたいなのが私の中に少しだけ残りましたが💦
あとがきの最後に中村先生が書かれていた一節をここに記しておきます。
本作は東日本大震災の直後から執筆された作品だそうです。
人にあまり言えないことの一つや二つ内面に抱えてるのが人間だと思う。
無理に明るく生きる必要はないし、明るさの強制は恐ろしい。
さらに言えば、「平均」から外れれば外れるほど、批判を受ける確率は高くなっていく。
そんな面倒な時代かもしれないけど、小説のページを開く時くらいそこから自由になれるよう、共に生きましょう。